[Fano330-R-Morris]


''[[アブストラクトゲームと数学]] コラム 1'' --- 当館でのアブストラクトゲームの分類については、[[アブストラクトゲームの種類]]を御覧ください。

* ゲーム理論とは [#gd37bb0e]

ゲーム理論[game theory]は、現実社会にみられる競争や協力の様々な形態を抽象化して数理的なモデルで捉え、各自の行動原理を数学的に研究する理論である。ゲーム理論におけるゲーム[game]とは、複数のプレイヤー[player]が、自分の利益が最大となることを目的として、相手の行動を予測しながら自分の行動を決めていくものである。このような抽象的なモデルの上では、[[将棋]]や[[チェス>Chess(欧米他)]]、トランプ、ギャンブルなど遊戯的なゲームと本質的に変わらないことから、ゲーム理論という名が付けられた。ゲーム理論は、意思決定の方法論の一種であり、相互連関的意思決定理論[interactive decision theory]と呼ぶこともできる。

個々のゲームの具体的な必勝法を考えることは、純粋な意味でのゲーム理論の対象範囲ではない。ゲーム理論で扱う一般的なゲームを社会ゲーム[social game]、遊戯的なゲームを室内ゲーム[domestic game]と呼ぶことがある。他の数学理論でもそうであるが、具体的な方程式を解くことよりも、問題の抽象的な構造を分析したり、一般的な方程式の解がどのような条件で存在するか、方程式の解がどんな性質を持つかが、主な研究対象となる。したがって、ゲーム理論を勉強しても、室内ゲームに強くなれるというわけではない。むしろ、現実社会での個人や集団の一般的な行動指針を与えるものである。

* 協力性と情報性によるゲームの分類 [#g854ead2]

** 多人数ゲーム [#sed00f34]

ゲームの分類としては、プレイヤーの人数による方法がある。一人ゲーム[one-player game]は、数理パズルのように、一人でおこなうゲームである。通常の意味でのゲーム理論で扱う範囲ではない。二人ゲーム[two-player game]は、二人のプレイヤーでおこなうゲームである。ゲームの最も簡単な形態である。[[チェス>Chess(欧米他)]]、[[将棋]]、[[オセロ>Othello]]、[[チェッカー>Checkersの仲間]]、[[囲碁]]、[[連珠]]など、盤面ゲームの多くは、二人ゲームである。
ゲームの分類としては、プレイヤーの人数による方法がある。一人ゲーム[one-player game]は、数理パズルのように、一人でおこなうゲームである。通常の意味でのゲーム理論で扱う範囲ではない。二人ゲーム[two-player game]は、二人のプレイヤーでおこなうゲームである。ゲームの最も簡単な形態である。[[チェス>Chess(欧米他)]]、[[将棋]]、[[オセロとリバーシ>Othello&Reversi]]、[[チェッカー>Checkersの仲間]]、[[囲碁]]、[[連珠]]など、盤面ゲームの多くは、二人ゲームである。
三人以上のゲームは、総称として多人数ゲーム[multi-player game]という。ダイヤモンドゲームは三人ゲーム、麻雀は四人ゲームである。多くのトランプゲームは、多人数ゲームである。

** 零和ゲームと非零和ゲーム [#acccf5ce]

二人ゲームにおいて、一方のプレイヤーの利益が、常に他方のプレイヤーの損失(マイナスの利益)になるとき、零和ゲーム[zero-sum game]という。すなわち、一方の損得と他方の損得が正反対になっているゲームである。多人数ゲームにおいては、プレイヤー全員の利得の総和が常に0になるものを零和ゲームという。零和ゲームでないものを非零和ゲーム[non-zero-sum game]という。胴元がいて、参加手数料を支払うようなギャンブルは、非零和ゲームである。プレイヤーが協力すれば、全員の利得が増えるようなゲームも非零和ゲームである。

| 零和ゲーム   | 全プレイヤーの利得の総和が0      | 誰かが得した分だけ、誰かが損をする |
| 非零和ゲーム | 全プレイヤーの利得の総和が0でない | 胴元に寺銭を取られる|

一般に、非零和ゲームより、零和ゲームの方が扱いが容易である。逆に、非零和ゲームの方が表現力があり、応用範囲が広い。非零和ゲームに対し、プレイヤーの利得の総和を0に打ち消すような利得を持った仮想プレイヤーを設けて、零和ゲームとみなすことがある。麻雀では、各自の持ち点を30,000点ではなく26,000点とし、最後にトップ以外のプレイヤーは30,000点からの収支で計算する。その上で、トップの得点は、総和が0になるように加算するので、零和ゲームとなっている。

** 協力ゲームと非協力ゲーム [#d74b6841]

全プレイヤーが自分の利得のみを考えて完全に利己的に行動するゲームを非協力ゲーム[in-cooperative game]という。二人零和ゲームは、非協力ゲームである。部分的に利他的な行動をとるプレイヤーが存在するゲームを協力ゲーム[cooperative game]という。全てのプレイヤーが協力して、集団としての利得を高めるゲームや、一部のプレイヤーが組んで、共通の敵に対するゲームである。
トランプのブリッジなど、二対二で組んでおこなう四人ゲームは協力ゲームである。団体スポーツも協力ゲームである。企業提携、生産調整、団体交渉なども協力ゲームである。

| 協力ゲーム   | 部分的に利他的な行動をおこなうプレイヤーが存在する             |
| 非協力ゲーム | 全プレイヤーが自分の利得のみを考えて完全に利己的に行動する |

** 完全情報ゲームと不完全情報ゲーム [#e0917097]

[[将棋]]や[[囲碁]]などのように、互いに相手の手の内が公開されているゲームを完全情報ゲーム[game with perfect information]という。逆に、相手に見えない手札を持つトランプゲームや麻雀は、不完全情報ゲームという。完全情報ゲームでは、運に左右されず、ほぼ実力通りの結果となる。不完全情報ゲームでは、手札などの好条件が揃えば、初心者がプロに勝てることもある。不完全情報ゲームにおいて、全プレイヤーが同じ部分情報を共有するゲームを情報対称ゲームといい、そうでないゲームを情報非対称ゲームという。販売者は製品の欠陥についても熟知しており、購入者はそうでないとき、情報の非対称性を利用して、本来の価値よりも高く売りつけることができる。

| 完全情報ゲーム   | 全ての情報が共有されている     | 互いに自分の手の内を公開 |
| 不完全情報ゲーム | プレイヤーごとに異なる情報を持つ | 相手に見えない手札を持つ |

** 確定ゲームと不確定ゲーム [#vf0b93e0]

[[将棋]]や[[囲碁]]などのように、偶然に左右されないゲームを確定ゲームという。逆に、双六のように、さいころの目のような偶然に左右されるゲームを不確定ゲームという。不確定ゲームでは、自分の手を完全には決められない。トランプの山札などは、プレイヤーに見えないだけで、ゲーム開始時に順序が決まっているので、確定不完全情報ゲームである。しかし、山札が常にシャッフルされていて、めくり札がその場で決まると考えれば、不確定不完全情報ゲームともいえる。さいころも、予め何百回と振って目を記録しておき、プレイヤーにその場で1つずつ提示すると考えれば、確定ゲームとなる。このあたりは、捉え方の問題である。不確定ゲームにおいて、さいころを振る自然[nature]もプレイヤーとみなし、確定ゲームとして捉えることがある。

| 確定ゲーム   | 偶然に左右されず、自分で手を完全に決められる   | さいころを使わない、ランダムな山札を使わない |
| 不確定ゲーム | 偶然に左右され、自分で手を完全には決められない | さいころを使う、ランダムな山札がある |

* 進行性によるゲームの分類 [#c1e1eb69]

** 同時進行ゲームと交互進行ゲーム [#zdaa2c50]

じゃんけんのように、全プレイヤーが同時に着手するものを同時進行ゲームという。同時進行ゲームは、利得表を用いて図解される。チェスや将棋などのように、各プレイヤーが順番に従って一人ずつ着手するものを順次進行ゲームという。特に、二人ゲームの場合は、交互進行ゲームという。交互進行ゲームは、ゲーム木を用いて図解される。交互進行ゲームにおいて、各プレイヤーの手の組合せを1つの戦略とみなせば、利得表で表すこともできる。最近のゲーム理論では、ゲーム木による分析が重要になっており、同時進行ゲームを、相手の出した手が不明な状態を許容する交互進行ゲームとして捉えることが多い。ゲームを利得表の形で分析する手法を戦略形[strategic form]といい、ゲーム木で分析する手法を展開形[expansion form]という。

** 着手対称ゲームと着手非対称ゲーム [#f9e45ccd]

全プレイヤーに対し、可能な手が同じであるゲームを着手対称ゲームという。じゃんけんや石捕りゲーム([[ニム>nim]])などは、着手対称ゲームである。逆に、プレイヤーごとに、可能な手が異なるものを着手非対称ゲームという。将棋やチェスは、互いの駒が異なるので、着手非対称ゲームである。[[囲碁]]や[[オセロ>Othello]]は、置く石の色が異なるので、着手非対称ゲームである。
全プレイヤーに対し、可能な手が同じであるゲームを着手対称ゲームという。じゃんけんや石捕りゲーム([[ニム>nim]])などは、着手対称ゲームである。逆に、プレイヤーごとに、可能な手が異なるものを着手非対称ゲームという。将棋やチェスは、互いの駒が異なるので、着手非対称ゲームである。[[囲碁]]や[[オセロとリバーシ>Othello&Reversi]]は、置く石の色が異なるので、着手非対称ゲームである。

| 着手対称ゲーム   | 全プレイヤーの可能な手が同じである | 自分と相手の駒に区別がない |
| 着手非対称ゲーム | プレイヤーごとに可能な手が異なる   | 自分と相手の駒に区別がある |

一般のゲーム理論では、二人ゲームにおいて、各プレイヤーの手が異なっていても、利得を与える効果が同じで、利得表が両者にとって対称になるゲームは着手対称ゲームとみなされる。

** 有限ゲームと無限ゲーム [#z36d426f]

有限回のうちに必ずゲームが終了するものを有限ゲーム[finite game]という。そうとは限らないものを無限ゲーム[infinite game]という。将棋は千日手ルール(引分けで指し直し)があるので、有限ゲームとなる。有限ゲームでは、さらに、有限のプレイヤー、可能な手が有限であることを前提とすることが多い。この場合、有限なゲーム木となる。あるゲームを繰り返しおこなう反復ゲーム[iterated game]という。

| 有限ゲーム | 有限回のうちに必ずゲームが終了する |
| 無限ゲーム | 無限にゲームが続く                 |

** 収束ゲームと非収束ゲーム [#h9079e3d]

[[チェス>Chess(欧米他)]]などは、局面が進むと駒の数が減り、可能な手の範囲が狭くなる。これに対し、[[将棋]]は取った駒が使えるので、可能な手の範囲は広いままである。前者を収束ゲーム、後者を非収束ゲームという。非収束ゲームの解析は、収束ゲームよりも困難である。

| 収束ゲーム   | 局面が進むと手の範囲が狭くなる     |
| 非収束ゲーム | 局面が進んでも手の範囲が狭まらない |

** 室内ゲームの分類の例 [#a9323d42]

|BGCOLOR(#f0e0e0):ゲーム|BGCOLOR(#f0e0e0):人数|BGCOLOR(#f0e0e0):零和|BGCOLOR(#f0e0e0):情報|BGCOLOR(#f0e0e0):確定|BGCOLOR(#f0e0e0):着手|BGCOLOR(#f0e0e0):有限|BGCOLOR(#f0e0e0):協力|BGCOLOR(#f0e0e0):進行|BGCOLOR(#f0e0e0):収束|
|[[チェス>Chess(欧米他)]]|二人|零和|完全情報|確定|非対称|有限|非協力|交互進行|収束|
|[[オセロ>Othello]]|二人|零和|完全情報|確定|非対称|有限|非協力|交互進行|収束|
|[[オセロとリバーシ>Othello&Reversi]]|二人|零和|完全情報|確定|非対称|有限|非協力|交互進行|収束|
|[[将棋]]|二人|零和|完全情報|確定|非対称|有限|非協力|交互進行|非収束|
|麻雀|四人|零和|不完全情報|不確定|非対称|有限|非協力|交互進行|収束|
|ブリッジ|四人|零和|不完全情報|確定|非対称|有限|協力|交互進行|収束|
|じゃんけん|二人|零和|完全情報|確定|対称|有限|非協力|同時進行|非収束|
|[[石取り>nim]]|二人|零和|完全情報|確定|対称|有限|非協力|交互進行|収束|
|ルーレット|多人数|非零和|不完全情報|不確定|対称|有限|非協力|同時進行|非収束|

* SEE ALSO [#sb0f146a]
#related

* Feedback [#u1caae51]
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