Arimaa / アリマは、元NASA職員Omar Syedが考案したゲームです。1999年から検討を重ね、2002年の終わりに発表されました。ゲームの発音は、アーリーマが一番近い読み方かもしれません。考案者の息子の名前Aamirのスペルを逆さにつづって、Aを加えたのが由来です。
普及のしやすさも考慮して、Chessの盤と駒を使ってプレーできるように設計されていますが、Chessとは全く異なるゲームです。
Arimaaは、コンピューターにとって、難しいゲームとして注目を集めています。 Syedは、Kasparovが1997年にDeep Blueに敗れて以来、コンピューターの計算力という一側面だけが人間に勝ったのであって、人間の他の能力には未だ到達できていないと感じていました。彼は、息子にChessを教えるために単純化したルールのChessを用いて遊んでいたとき、一度のターンでいくつものステップを設けたルールのゲームであれば、人間には理解しやすくプレーできても、コンピューターには困難なものになるのではないかと発見しました。
考案者のSyedは、発表当初の2002から、初めにコンピューターAIによって3人のトップレベルの人間に勝った個人、組織に対して$10,000の賞金を与えると宣言しています。この賞の期限は、2020年までです。この賞の目的は、ソフトウェアの進歩を期待するもので、ほうっておいてもハードウェアの進歩によって強いコンピューターができることが予測できるため、こうした期限を設けているそうです。
2人で遊ぶゲームです。
8x8のボードに、4つのトラップ(写真中の黒いマス)があります。
駒は、上写真のように、ゴールド、シルバーそれぞれ、
象x1, 駱駝x1, 馬x2, 犬x2, 猫x2, 兎x8
を持ってゲームを開始します。
駒には、写真の配置の順に強弱があります。
象 > 駱駝 > 馬 > 犬 > 猫 > 兎
強 <.............................> 弱
初期配置は、駒を何も置かない状態から開始します。それぞれのプレーヤーは、 ボードを挟んで相対峙します。
ゴールド=先手のプレーヤーが駒を自分に近い2段に駒をすべて配置し、続いてシルバー=先手のプレーヤーがすべての駒を配置します。(例: ページ先頭の写真)
配置が完了したら、ゴールドのプレーヤーから移動を開始します。 すべての駒の移動は、縦・横に動けます。ただし、兎のみ後ろに下がることはできません。
それぞれのターンで、プレーヤーは4つのステップが与えられています。駒を1マス動かすことを1ステップとして数えます。つまり、同じ駒を4マス進める(途中方向を変えてもかまいません。)ことも、4つの駒を1マスずつ移動するなど、任意にステップを使うことができます。最低1ステップの動作をすれば良く、4つすべてのステップを使う必要はありません。
相手より強い駒は、隣接する相手の駒を動かすことできます。自分の駒と同じ強さの駒は動かせません。
相手の駒を動かすには、押す、引くの二通りがあります。自分の駒の進行方向に相手の駒が(縦横に)隣接していて、その先の(相手の駒が合法的に動ける任意の)マスが空いている場合に押すことができます。また、隣接した相手の駒があり、自分の移動によって空いたマスに相手の駒を引きいれることが引くの動作です。この押すと引くの動作は、2ステップとしてカウントされます。もちろん、同じ手番中でこの動作を完了しなければならず、次の手番にステップを持ち越すことはできません。
相手の弱い駒が、自分の駒に隣接している場合、相手の駒はフリーズ状態にあり、動くことができません。別の味方の駒がフリーズした駒に隣接していれば、その駒を動かすことができます。(離れ駒でなければフリーズしません。)
どの駒も、トラップに入れられるとボードから取り除かれます。押す、引くを使って相手の駒をトラップに入れてしまいましょう。(上の写真、押すの1cの動作)
兎が一つでも相手陣地の一番奥の段に到達するか、相手の兎をすべてトラップしたプレーヤーの勝ちです。
初期配置に特に決まった形式はありませんが、強い駒を前線に配置し、兎を守るようにするのがお勧めです。
Arimaaは、ルールは単純で人間にとっては、それほど難しいゲームではありません。 しかし、なぜコンピューターにとって難しいのでしょうか。現在のコンピューターによるゲームAIは、ゲーム木と局面判断によるアルゴリズムと、局面判断をしないモンテカルロ手法による手の勝率計算による手法、またそれらの組み合わせが中心です。しかし、人間はその他にもパターン認識能力など、コンピューターソフトウェアとして組み込まれていない能力を使って状況を高速・(やや)正確に判断できます。こうした、仕組みを解明することが、これからのソフトウェアの進歩のたどるべき方向の一つなのでしょう。