アブストラクトゲームのおもしろさとは何でしょうか。
人それぞれ、ゲームに対する感じ方は異なります。同じゲームを好きと思う人もいれば、ちっとも興味が持てない人もいます。 アブストラクトゲームに限らず、コンピュータゲームでも、他の趣味のものでも、みなさん主観的な意見があると思います。
好き嫌いはさておき、アブストラクトゲームをおもしろいと感じる人が、アブストラクトゲームすべてをおもしろいと思うのではなく、中にはおもしろく感じたり、つまらないと感じるものがあります。ここでは、アブストラクトゲームに興味を持てる人が、どういった要素をゲームのおもしろさと感じるかについてカジュアルに 検討してみようと思います。
検討にあたって、ゲームの普及度合や認知度については(できるだけ)独立に考えることにします。
普及しているゲームは、そもそもおもしろいと感じる人が多いので普及しているはずです。 しかし、ゲームが普及するには
"おもしろさ" だけではなく、
そのゲームに関する "情報量"
の影響を強く受けます。マーケティングや教育制度のしっかりしているゲームや、近年コンピュータゲームの販売戦略の要にもなっている、複合的な商品販売戦略*2の成功から、露出の多いものが広く受け入れられることは間違いありません。
ゲームを知ってもらわなければ、遊んでもらうこともなく、おもしろいかどうかなんて判断すらできません。一方で、人は対象物に繰り返し接することで愛着がわいてきます。また、気に入っているものも、いずれ飽きてしまうこともあります。 おもしろさを測ろうとすると、対象のゲームにより深く接することになるので、おもしろさの評価が変化してしまう かもしれません。
アブストラクトゲームの魅力は、その抽象性の高さが上げられます。あつかう駒やルールの背景に、テーマがなかったり 薄いのがいいのです。
小説で書かれたストーリーをマンガや映画で見ると、何日もかけて読むストーリーをわずか数時間で見終わるその簡便さはとても重宝です。 しかし、自分の頭の中で描いていた主人公や、絵になり動き出したとき、自分のイメージとずれていてがっかりしてしまうこともよくあります。*3
人の想像力は豊かですから、行間にかかれずに埋もれてしまった部分や、絵画でも塗り残しの空白の部分に、自分の文字や色をあてはめることができるのです。 できるだけでなく、頭の中の創造行為がとても快適に感じるのです。
なども、同じようにちょっと言い過ぎですが創造的な行為だと思います。
アブストラクトゲームなので当たり前ですが、抽象的であることで、
がアブストラクトゲームの醍醐味ではないでしょうか。
アブストラクトゲームの種類では、様々な種類のアブストラクトゲームをプレーする意義について論じていいます。ぜひご一読ください。
音楽の三要素に旋律, 和音, 拍子があります。これらの組み合わせで、人は音楽からさまざまな印象を受けるのですが、 ゲームにも似たような要素があると考えています。
アブストラクトゲームでは、次のような要素が重要だと言えます。
前節でも記したように、単純なルールや駒・配置から最終的に予想もしないような複雑な軌跡(棋譜)を残せるようなゲームは魅力的です。
館長考案のFlipFlopとRinne&Tenseiは、これらおもしろいアブストラクトゲームを目指して作りました。 FlipFlopは3x3という小さな盤と二種類の駒だけでけっこう複雑な棋譜ができあがります。*4 Rinne&Tenseiも、5x6という小さなボード上でおもしろい変化が現れます。駒の性質も一手ごとに変化して、 従来のゲームと同じようでずいぶんと違う印象を受けることと思います。 そして20〜30手*5で決着がつきますが、その間形勢はくるくると変わります。 これら二つのゲームは、Zillions of Gamesのサイトで発表後、 「小さくて良いゲームだ」, 「オリジナルで新しい」と高い評価をいただいています。
ゲームのルールや戦略を立てるだけなら、どのようなゲームボードや駒を使っても同じなのですが、いざ人と対峙してゲームすると、 どのような道具で遊ぶかで、ゲームのおもしろさが異なってきます。
囲碁やチェスや将棋は、プラスチック製の安価なものなら100円〜1,000円ぐらいで十分に遊べるものが手に入ります。 一方、コレクターが欲しがるようなものは、石、駒だけで数十万円〜数百万円、盤だけで同じくらいのものも多く存在します。 このようなものは、工芸術品として非常に高い価値があるものや、盤や駒の素材が高価なものです。 コレクターアイテムは、遊ぶことよりも集めたり鑑賞することが目的なので、高価な道具であそんだからおもしろい、ということではありませんが、 道具そのものが文化的価値があるよい例だと言えます。
アブストラクトゲームは、数学的な対称性など、図形的にとても美しいものが多く、綺麗な駒や盤上の差掛けの局面も趣きがあるものです。
同じゲームでも、大きく重みのある駒や盤を使って遊ぶと、小さな駒でちょこちょこ遊ぶよりも、ずっと 迫力があり、ゲーム中も集中して考えることができます。 チェスは、トーナメントサイズのものだと、盤のサイズが19インチほどあり、将棋や囲碁に比べてずいぶんと大きく、 "がっちり" 駒を掴んで、"どん" と置く感じは、まさにスポーツの対戦です。*7
将棋では、ジャンボ将棋という従来の将棋の駒と盤を大きくした製品があります。