増川宏一氏の盤上遊技では、アブストラクトゲームを、 下記のように分類しています。
ゲームのルールに加えて、歴史的な成り立ちや、流行の仕方を考慮した分類です。
また、Zillions of Gamesのサイトでは、ゲームをテーマ別に分類して大量のゲームから目的のものを見つけやすいようにしています。
当博物館では現在、ゲームの目的や歴史的に認知されている分類、販売形態等によって、アブストラクトゲームを分類しています。 いずれのゲームも、下記の分類にあわせてデザインされているわけではないので、中には分類にあてはまらないものや、複数の性質を持つものもあります。
日本では、アブストラクトゲームは、将棋、囲碁、そしてオセロが広く普及しています。これらのゲームのすべてを深くやり込んでいる方は少ないかもしれません。将棋はめっぽう強くても、他のゲームはそれほどでもない人もいるでしょう。一般に、接している時間の長い特定のゲームは、より上達するものです。
これは、スポーツ種目と同様で、例えば短距離走と長距離走では、異なる運動能力が必要です。短距離走を長くやっていれば、無酸素運動による瞬発性に優れた太くて上部な白い筋肉が発達すると言われています。一方、長距離走を長くやれば、心肺能力が高まり、有酸素運動に優れた毛細血管の発達した赤い筋肉が成長します。
また、生まれ持った性質として、短距離に向いている人と、長距離に向いている体をもつ人がいるように、将棋型の思考、囲碁型のいずれかに、より向いている人もいることでしょう。自分に向いている種目、競技の方が、より上達も早く、自然とその種目の訓練に使う時間も長くなり、専門性が高まっていきます。
「将棋が強い人は、数学が得意」という推測もありますが、はたしてそうでしょうか。もちろん、頭脳の同じ部分を使い、将棋型の考え方が通用する、数学における思考技術はあるに違いありません。でも、数学脳=将棋脳と決めつけるのは、少々早計です。同じ数学でも、数を考える時、図形を考える時、論理を考える時には、それぞれ様々な異なる能力・視点を駆使して問題の解決に挑みますよね。
近年では、子供の能力育成の一貫として将棋、囲碁を科目として取り入れている小学校等もあるそうです。特定のゲーム(例えば将棋)を深く体験することで、将棋型の考え方が身につき、その思考方法は将棋以外の分野でも力を発揮することもあるでしょう。また、対人競技をルールにしたがい、礼儀を持ってプレーすることで、脳力以外にも人としての価値を高めることも期待できます。
若いうちに限られた時間の中で、特定のゲームを掘り下げ、上達を目指すのは素晴らしいことです。一方、さまざまな種類のゲームに接して異なる考え方広い視野を手に入れることは、子供はもちろん、硬くなった大人の脳力向上に役立つことでしょう。当博物館では、囲碁や将棋以外にも幅広く紹介する頭脳ゲームが、みなさんに新しい思考方法を発見や視点を広げるきっかけになることを願っております。