Morrisには、数多くの派生が世界中にあり、Board and Table Games from Many Civilizations等に記述されています。本館では、Zillions of Gamesで動作するプログラムも参考にして整理しました。
Morrisの仲間で、現在もっともポピュラーなゲームは、Nine Men's Morrisでしょう。その派生ゲームは世界中に数多く存在しています。
Morrisが、認知されている背景には、 中世ヨーロッパでのファミリーゲームとしての大流行があります。 その伝搬については、ギリシャまたはフェニキアの商人たちが北ヨーロッパに伝えたとも、 北アフリカ起源のアラビア人たちが南ヨーロッパに伝えた、とも推測されていますが、正確なところは分かっていません。
Morrisの名については、古いフランス語"merel"(コイン、カウンターの意味)が起源であるとも、南ヨーロッパにゲームを伝えたかも知れないとされる"Moor"(北アフリカのイスラム人。アラブ人とベルベル人との混血。)が変化したものであるとも、(盤の形が似ていることからか)Square danceの一種Moorish danceに由来するとも言われています。
Three Men's Morris(斜め線の入ったバージョン)*1とNine Men's Morrisの盤が、エジプトの町Kurnaの寺院の屋根に彫られているのが見つかっています。寺院が建立された後すぐに彫られたものであれば、ゲームは紀元前1400年くらいから遊ばれていたことになりますが、少し時代が下ってから彫られた可能性も高いといわれています。
紀元前1年にローマの詩人 Ovidが著した Ars Amatoriaの 中にThree Men's Morrisに関する記述があります。その盤が建物の中で数多く見つかっていることから、ローマ時代には広く遊ばれていたと思われますが、それらの盤が、どの時代に、どこから建物に持ち込まれたかを特定することができないため、ゲームの起源を知ることは困難です。盤は通常、木製か石製でしたが、富裕層向けに象牙製のものもありました。
Three Men's Morrisは、中国では孔子の時代、紀元前500年ごろ Yihという名前で遊ばれていました。 現代においては、Luk tsut K'iという名で中国南部に残っています。 紀元6世紀ごろまでにはルールや解説を記述した本が多く著されていることから、ゲームが広く知られていたことが分かります。中国南部では1950年代になっても遊ばれていました。
1300年代のイギリスで、ゲームは盛んに遊ばれたようで、カンタベリー寺院やウェストミンスター寺院などの椅子に、修道僧によって彫られたと思われるMorrisの盤が見つかっています。
時代を経て、Six Men's Morrisがヨーロッパで広く遊ばれるようになりました。このゲームは中世イタリア、フランス、英国で人気を博しましたが、16世紀までには廃れてしまいました。
ゲームはさらに洗練され、今日、ファミリーの中でもっとも広く遊ばれているNine Men's Morrisとなりました。Nine Men's Morrisは、Nine Men's Morris(英) / Nine Mens Morris(英) / Mill(英) / Morris(英) / Merelles(仏) / Merrills(英) / Merels(西) / Muhle(独) / Molle(ノルウェイ)などとも呼ばれています。
Nine Men's Morrisの盤は、前述したようにエジプトの町Kurnaの寺院の屋根に彫られて(紀元前1500年ごろ)いた他、トロイの第一都市、アテネのアクロポリス、紀元1世紀ごろのセイロンの建物内でも見つかっています。
13世紀にカスティーリャ王 Alfonso Xが編纂した 'Libro de los juegos' (「ゲームの本」)には、Nine Men's Morrisに興じるプレイヤーたちと、ゲームの進行が分かる状態で上からみた盤の美しい絵と解説文(13世紀には印刷の技術はありませんでしたから、イラストも解説も手描きです)が載っています。Alfonso Xは、ダイスを使って遊ぶVariantも紹介しています。
Chessの世界チャンピオンで、Lascaの考案者であるEmanuel Laskerも、自著 Brettspiele der Volker(Berlin, 1931)のなかでMorrisについて書いています。
ここでは、Morrisの仲間に共通(=もっとも一般的)のルールを紹介します。(各ゲームに特有のルールは、個別のページで説明します。) 各プレイヤーは3個(Three Men's Morrisなどの場合。ゲームによって4個、5個、6個 … 12個)の駒("men")をもち、盤上に駒のない状態でゲームをスタートします。
各プレイヤーは交互に、自駒を盤上の任意の交点に置いてゆきます。全ての自駒を盤上に配置し終わったら、次のターンから空いている隣の交点に移動させてゆきます。
1つの交点には、同時に2つ以上の駒は置くことができません。
プレイヤーは自駒を3つ、縦か横か斜めの直線で並べる(Millを作る)ことができたら、盤上の敵駒を1つ選んで捕獲し、盤上から取り去ることができます。取り去った駒は再利用できません。
敵の駒は、Millを形成していないものから選んで捕獲します。
パスはできません。
相手の駒を捕獲して2つ以下にするか、動けなくしたら勝ちです。 Three Men's Morrisとそのvariantsでは、縦横斜めのいずれかに直線で自駒を3つ、先に並べることができたほうが勝ちです。