GIPFにはじまる、ベルギーのKris Burm によってデザインされたアブストラクトゲームをとりまとめたProject GIPFは、現在下記6本の二人対戦アブストラクトゲームが含まれています。
PUNCTは、YINSHより後の発売ですが、プロジェクトで5番目のゲームというあつかいです。
TAMSKは、TZAARによって置き換えられました。
いずれのゲームも、アブストラクトゲームのお手本といえるほど抽象度が高い駒とボードを使い、数学的対称性を持った美しいデザインのゲームです。
これらのゲームを一つのプロジェクトとしてリリースする目的は、 シリーズ全体を通じて、 シリーズ中のゲーム単体だけからではなく、文字通りシリーズ全体からも、 ゲーム性や挑戦の両方を提供することだそうです。
しかしプロジェクトGIPFのもっとも大きな目玉は、各ゲームの特徴を凝縮した「ポテンシャル」を使って、GIPFの中にProject GIPFのその他各ゲームのフレーバーをうまく取り込んで、各ゲームを連携させる仕組みを提供していることです。
さらに、GIPFの複合ゲームでは、ゲームの中でサブ・ゲームをしながら勝負を進めよう、間にはさむサブ・ゲームは、Project GIPFのすべてのゲームはもちろんのこと、Chessなど、その他のどんなゲームでもよい、というコンセプトを提案しています。
Project GIPFのいずれのゲームにも、ポテンシャル(potential)が提供されています。ポテンシャルは、それぞれのゲームの拡張キット(駒)です。ポテンシャルを使うことで、それぞれのゲームの派生ルールを楽しんだり、他のゲームと結合させることができます。
カードゲームやボードゲームでは、拡張セットによってゲームを継続的に 楽しめる企画をよく見かけます。 アブストラクトゲームでも、Hiveが拡張駒を発売していますが、 複数のゲームをシリーズ化して結合する発想はユニークで意欲的です。
アブストラクトゲームでは、ルールが複雑になりすぎると、 プレーヤーの興がそがれる傾向があります。*1 Project GIPFのゲームは、それぞれが短期決着系のお手軽ゲームではなく、 本格戦略ゲームですので、これは大変挑戦的な試みです。
現在、Project GIPFの拡張セット、GIPF Project Setsは、以下の三セットが発売されています。
オフィシャルページでは、これらのポテンシャルを使って、後述する二つ(+)のゲーム、 Ultimate GIPF, Combining Games が紹介されています。
各Potential = 左からGIPF, TAMSK, ZÈRTZ, DVONN, YINSH, PÜNCT
GIPFのルール(スタンダード・バージョンとトーナメント・バージョン)では、通常駒を2個あわせて使うGIPF駒が存在しますが、これを、「通常駒がGIPFポテンシャルを帯びている状態」と考えます。
GIPFポテンシャルの能力を一口で説明すると、
同様に、その他4つのポテンシャルにはそれぞれ次のような特徴を駒に与えます。
上記ポテンシャルを使って、GIPFを遊ぶのが、Ultimate GIPFです。
これで両プレイイヤーは、それぞれ18個の通常駒と、18枚のポテンシャルを持つことになります。
トーナメント・ルールを使ってゲームを開始します。
互いにまず、好きなだけの数のGIPF駒を盤上に投入、GIPF駒が終わったら、その他のポテンシャルを帯びた駒を全て投入します。
それが終了したら、通常駒でゲームを続けます。
次の一手で何が起こるかわからない、想像を絶するGIPFゲームが楽しめるはず、と、オフィシャル・サイトでは薦めています。
複合ゲームは、Ultimate GIPFよりさらに複雑です。
GIPFのプレイ中に一方のプレイイヤーがポテンシャルの能力を使いたいとき、もう一方のプレイヤーはそのポテンシャルの能力を無効化するためのチャレンジをすることができます。 GIPFのプレイを継続するために、GIPFをいったん中断してサブ・ゲームで勝負をつけなければならないのです。
複合ゲームは、はじめる前に、両プレイヤーは、あらゆるルールについて合意しておく必要があります: GIPFをどのゲームと複合するのか、何回、どんな条件で、チャレンジをおこなうのか、サブ・ゲームは何にするのか(Chessでも、GIPFの中のGIPFでもかまいません)… そのときの気分や、ゲームに使える時間などによって、自由に決められます。
Project各ゲームの特徴を凝縮した「ポテンシャル」という拡張キットを使って各ゲームをうまく連携させ、ゲームの戦略性や深みをさらにアップさせる、というアイディアは野心的です。 最初からその実現のためにこのProjectを入念に企画し、それぞれ完成度の高い6本の独立したアブストラクトゲームをリリース、そしてそれらが、構想どおり、ポテンシャルを使って見事に連携するシステムを纏め上げたことは、注目に値すると思います。
しかし、「複合ゲーム」は、ゲームのシステムというよりも、「サブ・ゲームズ・イン・ゲーム」というコンセプトの提案にとどまって、遊び方はユーザーに委ねた形になっています。