このゲームを、すぐに遊びたい人は、こちらAbstract Strategy Games Online へ
King's Valley*1は、株式会社ギフトボックス 代表取締役 山本光夫さん(装飾工芸家、タイル作家、ボードゲームクリエーター)のオリジナル・ゲームです。 2006年10月に発売されました。
ゲームの正式名称は、King's Valleyですが、山本氏のページにある名称のef『エフ』King's Valley (王家の谷をめぐる戦い)のef『エフ』は、開発時の名称だそうです。
当館では、オンラインでKing's Valleyを体験していただけます。(たぶん、世界初
)
King's Valleyは、Julien Kloetzer氏によって、2010年10月に弱く解決されています。
各プレイヤー同色の家臣駒x4とKing駒x1を持ち、5x5のボードに、写真のようにセットアップします。それぞれのチームの列の中央がKing駒です。
中央のマスを King's Valley と呼びます。
どちらのプレーヤーが先手でもかまいません
王様駒を先に King's Valley に到達させた方が勝ちです。
同一局面が二回現れたら千日手で、同一局面であることを指摘して、相手プレーヤーが受け状況を認めれば、引き分けです。*3
右図のようにKingが敵駒に囲まれて動けなくなったら負けです、必然的に囲まれたプレーヤーに勝ち目がなくなりますので、 負けになります。*4
下図は、お互いが協力しあわないと現れない局面ですが、手番プレーヤーに合法手がない状態になった場合も、手のないプレーヤーの負けです。
2010年12月、山本氏から「王の奪還」: Retrieve the Kingルールが発表になりました。敵に捕らわれた王を奪還し、王家の谷に連れ帰るのが目的のルールです。
先にも記したように、オリジナルの初期配置とルールでは、Julienによって解決されているため、お互いの王の位置を入れ替えてゲームを開始するルールが提案されました。この配置では、2010年12月時点、ゲームは解決されていません。
レースゲームですので、それぞれのプレーヤーのKingが、あと何手でValley入りできるか、速度計算を心がけます。家臣駒が、Valleyに隣接した位置に、最低一つは存在していなければ、Valleyに入ることはできないことは明らかです。隣接した位置に駒があれば、一手詰みがあるかもしれません。
盤上の自分の駒のポジションが有利な形になるよう心がけます。 有利な形とは、次のような場所です。
完全に優位を作られてしまってからでは、数手先の相手のValley入りを阻止できなくなることもあります。相手の狙いを読み取りましょう。
シンプルなゲームですので、完全解決を目指して研究するのも面白いと思います。
ゲームを解決したJulien Kloetzer氏は、このゲームはオフェンス側がとても有利で、一度「詰めろ」がかかると、ディフェンスが間に合わない局面になりやすいため、手番を握ることがとても重要な戦略であると指摘しています。
King's Valley は、山本氏の作品として当館で紹介する最初の作品です。
山本氏はCIFRA以来、多くのボードゲームを創作している意欲的なゲーム作家です。 現在一般に流通しているゲームの多くは、プラスチックや木が基本素材ですが、 工芸家、タイル作家でもある山本氏の作品は、そのほとんどにタイルを巧みに使った、 大変美しいゲームです。
アブストラクトゲームのおもしろさでも論じましたが、 用具の与える印象は、ゲームのおもしろさの要素として、とても大きな割合を占めています。将棋や囲碁の駒、石、盤に使う木、石、貝などの素材は、着手時の音や感触が珍重されます*5。 King's Valleyの、駒の美しさ、手に持ったときのマッシブな感触はとても魅力的です。このゲームを購入する人の多くは、外観の美しさが第一の理由だったかもしれません。 しかしなによりも、着手時のカチッという音は、駒も盤もタイルでできているから出せる素晴らしい音色で、ゲームに触ってみないと味わえません。
以前から、山本氏の作品を紹介したいと思っていました。 ご本人は、King's Valleyは、ゲームの深度などで他の作品よりも軽めだとお話されていましたが、ボードや駒に負けないほど、美しいルールのゲームです。
決着が早い手軽なゲームですが、奥が深く、やりこみがいのあるゲームです。
当館では今後も、順次山本氏の作品を紹介していきたいと考えています。