将棋は、チェスの派生の中でもユニークな特色を持つ、日本独自のゲームです。
増川氏の調査によると、 発見されている最古の将棋駒は、奈良の興福寺で、 ごろの将棋関係の習書木簡、紀年木簡(1058年7月26日-旧暦か?)などと 一緒に出土したものだそうです。 当時の将棋のルールは、現在のルールと異なるものだったようです。
持ち駒使用が認められた現代のルールになったのは、 室町時代の中期(15世紀)ごろだと推察されています。 中世には、中将棋が盛んで、現行の将棋は少将棋と区別して 記載されていました。
1590代-豊臣政権の終わりごろから、技芸に秀でた文人(僧侶や能楽師等)が、 秀頼等の御前で囲碁や将棋を披露する会が催されるようになりました。 このころ、公家など身分の高い者の間では、中将棋が多く指され、武家や 商人などは少将棋を好んだようです。囲碁や将棋の会でも、囲碁、中将棋、 少将棋が並んで披露されました。
ほぼ同じ時期から、将棋指し囲碁打ちは家康も往訪するようになりました。 将棋指しは、少将棋の技を磨き、作物と呼ぶ詰将棋集を作り、献上するように なったのもこの時期からです。
江戸に幕府が開かれ(1603)、将棋の大橋家(初代宗桂)と囲碁の本因坊家 が禄を受けるようになり(1612)、将棋指し、囲碁打ちを専門とするプロが誕生します。 江戸時代、将棋の大橋家は後に分家して、伊藤家、大橋分家の三家が家元になりました。 将棋指しの最高位である名人は、この三家の中での世襲制、終生名人でした。
幕府の崩壊から、重要なスポンサーを失った将棋は、家元制がなくなります。実力者が 散らばる混沌とした中、棋士達は組織を作り至難を乗り越えます。関根十三世名人が、 1935年声明、1937年から実力名人制が始まりました。
名人の系譜
9x9の盤を使い、上記のように配置します。(並べ方は、チェスと将棋将棋の駒の並べ方に大橋流、伊藤流の順を記してあります。)
歩兵が並んでいる三段目からが陣地になります。
左側が初期状態の駒で、右が成った状態の駒です。
相手陣地の三段目に入ると成りを選択できます。ただし、歩兵,香車が敵陣の一段目まで進む、桂馬が相手の一段目/二段目まで進むと行き場所が無いため、必ず成らなければなりません。また、手番で、敵陣から引き上げる時にも成りを選択できます。
相手の駒を取得すると、自分の駒台に相手にわかるように乗せます。駒台の駒を持ち駒といいます。 持ち駒は、自分の手番の時に自軍の駒として、以下の条件を満たす任意の位置に、初期状態で張ることができます。
同じ条件で対局する場合、歩兵を五枚振って、その表の数で先手後手を決めます。振った際、重なった駒は数えません。
対局者どうしの力の差が大きい場合、強い方(上手)が自軍からいくつかの駒を落として(使わずに)対局することを、駒落ち戦と言います。駒落ち戦では、上手が必ず先手です。
よく指される駒落ちの種類には、次のようなものがあります。(下に行くほどハンデが重くなります)
相手の王を詰めれば勝ちです。
同じ局面が三回現れると、千日手と呼び、先手後手を入れ替えて対局しなおしです。
お互いの玉将が敵陣に入り(玉将が敵陣に入ることを入玉と呼びます)、決着がつかない状態になって、これ以上駒が取れなくなった時点で以下のように点数を数えます。お互いの点数が規定点以上であれば、引き分けになります。この状態を持将棋と呼びます。
玉を除いた駒(盤上・持ち駒とも)のうち、飛車と角を5点、その他の駒を1点として合計点を数えます。
駒落ち戦の場合は、落とした駒が上手にあるものとして点数計算をします。
将棋は、持ち駒使用ができるルールのため、終盤のゲーム収束が、他のChessの仲間と異なり単調ではありません。といっても、終盤にゲームが発散してしまい、興味をそがれるような展開にもなりません。Chessでは、Pawnを除くすべての駒が、前後左右に対象的な動きができる強力な駒によって、ゲームのスピード感*1を実現しています。将棋では、Chessの駒に対応するQueen-金将, Bishop-銀将, Knight-桂馬, Rook-香車のいずれもが、Chessよりもとても弱い動きに限定されています。基本的に駒の動きが前進方向に強く強制されていて、これがゲームの発散を防いでいるわけです。
一方のゲームへのスピード感は、飛車、角行の働きと、持ち駒を任意の位置に使えることによってバランスが取られています。
ゲーム自体の適度な複雑さ*2によって、人間の興味をひきつけつつ、コンピューターが未だ*3全人類に勝てる状態まで成長していません。
終盤の面白さをぎゅっと詰め込んだ、詰め将棋は、将棋のルールから逸脱せずに独特のパズルを実現します。本将棋の発展と共に、独自の文化を築いています。
日本の多くの人々は、将棋を手近でプレーでき、プロの一流の棋譜を堪能できる環境にあるのは幸いです。 国際将棋フォーラムや棋士の普及活動によって、海外でも徐々に競技人口が増えています。しかし、駒に書かれている文字や、プロの公式対局は椅子を用いない日本独自のスタイルで対局するなど、海外の人たちにとってはまだまだハードルが高いのかもしれません。チェスのように将棋版もチェッカー模様であれば、角行や桂馬の効きがわかりやすくなるとの要望もあります。
しかし、なによりも身近にゲームを一緒に楽しめる人や環境が整うことが、普及に不可欠なことは間違えありません。海外普及に多くの時間を割いてらっしゃる棋士の方たちだけでなく、インターネットを使ったり、海外に居る、行く日本の将棋ファンによって、アマチュアの交流も盛んになれば、日本発のすばらしいゲームが普及し発展することになると思います。